パワーステアリングとは?警告灯が光る原因やオイル交換の目安まで解説
パワーステアリングはパワステとも呼ばれ、現代では多くの車に備わっているハンドル周りの装備です。
普段の運転で意識することはほとんどないため、パワーステアリング警告灯が光ったり、ハンドルが急に重くなったりしてはじめて、「そのまま運転を続けてよいのか」「次の車検に通るのか」と気になった方も多いのではないでしょうか。
この記事ではパワーステアリングの役割と方式の違いから、パワーステアリング警告灯が光る原因と対処、パワーステアリングフルードの交換まで、まとめて解説します。
パワーステアリングとは
パワーステアリングは、ハンドルを軽く回せるようにする装備です。ドライバーがハンドルに加えた力に、ポンプやモーターが生み出した力を足すことで、少ない力でタイヤの向きを変えられるようにしています。
くるまのハヤシの公式サイトでは、パワーステアリングが装備されている在庫車に、「パワーステアリング」と記載しています(「装備情報」の欄)。

パワーステアリングがない車のハンドルの重さ
パワーステアリングが装備されていない車では、停車したままハンドルを回すのに相当な体力が要ります。
タイヤの向きを変えるのに要る力が小さくて済むのは、転がっているあいだは、路面と接する場所が少しずつ入れ替わるからです。速度が落ちるほどタイヤの転がりは減り、停車したまま切るときは、タイヤが路面に接したまま向きを変えることになるので、ハンドルがいちばん重くなります。そのため、駐車のたびにハンドルを腕の力で押し込むような操作が必要になり、切り返しを何度か繰り返すだけで疲れてしまうのです。パワーステアリングのアシストが作動しなくなった車で感じる重さも、これに近いものです。
パワーステアリングの種類
パワーステアリングは、ハンドル操作をアシストする力をどこから取り出すかによって、大きく油圧式パワーステアリング、電動パワーステアリング、電動油圧式パワーステアリングの3つに分けられます。
油圧式パワーステアリング
油圧式パワーステアリングは、エンジンの力でポンプを回し、パワーステアリングフルード(パワステオイル)に圧力をかけて、ハンドル操作をアシストします。ポンプを回す力をエンジンから取り出す油圧式パワーステアリングは、電動式パワーステアリングと比べるとエネルギー消費が大きく、燃費の面では不利になる傾向があります。
また、油圧式パワーステアリングはパワーステアリングフルードの交換と点検が要る方式でもあります。さらに、エンジンが止まっているあいだはポンプが回らないため、油圧式パワーステアリングは、停車中にエンジンを止める仕組み(アイドリングストップ)と組み合わせにくい方式です。
電動パワーステアリング
電動パワーステアリングは、モーターの力でハンドル操作をアシストする装備で、EPSとも呼ばれます。電動パワーステアリングはハンドルにかかる力をセンサーが読み取り、コンピュータがハンドル操作に必要なアシスト量を計算してモーターを駆動することで、ドライバーがハンドルを回す力を軽減しています。
電動パワーステアリングは、エンジンの力を使わないぶん燃費の面で有利です。
ハンドル操作のアシスト量をモーターの制御で決められるのも、電動パワーステアリングの特徴です。たとえば、低速では軽く、速度が上がると重く、というように、走行速度に応じてハンドルの手応えを変えられます。なお、同じ制御は電子制御を加えた油圧式パワーステアリングでも行われています。車線をはみ出しそうなときにハンドルを戻すアシストや、駐車のときにハンドルを自動で動かす機能が成り立つのも、モーターとコンピュータでハンドル操作のアシストを制御しているからです。
電動油圧式パワーステアリング
電動油圧式パワーステアリングと油圧式パワーステアリングは、油圧でハンドル操作をアシストする点は同じですが、ポンプをエンジンではなくモーターで回す点が異なります。
ハンドルを操作したときだけポンプが作動するため、電動油圧式パワーステアリングは、常にポンプを回し続ける油圧式パワーステアリングより、燃費の面で有利になります。電動油圧式パワーステアリングのねらいは、油圧式パワーステアリングならではの操作の感触を残しながら、エンジンの負担を減らすことです。
ただし、電動油圧式パワーステアリングもパワーステアリングフルードを使うため、点検と交換が要ります。
加えて、ポンプを回すモーターや制御装置が故障することもあります。
自分の車のパワーステアリングの方式を確認する方法
自分の車のパワーステアリングがどの方式かを確かめるもっとも確実な方法は、取扱説明書とメーカーの公式情報を見ることです。他には、整備工場でパワーステアリングの方式を見てもらう方法もあります。
また、どの方式かの見当をつけるだけなら、エンジンルームを開けて、パワーステアリングフルードのタンクがあるかどうかを探す方法もあります。パワーステアリングフルードのタンクがあれば油圧式パワーステアリングか電動油圧式パワーステアリング、見当たらなければ電動パワーステアリングである可能性が高いでしょう(エンジンルームを開けるときはエンジンが冷えていることを確かめ、どのタンクか見分けがつかないときは無理に触らないようにしましょう)。
なお、近年は電動パワーステアリングが採用されることが多いので、年式の新しい軽自動車やコンパクトカーであれば、電動パワーステアリングである可能性はさらに高くなります。
ただし、パワーステアリングフルードのタンクは位置も表示もメーカーや車種によって違い、ほかの液体のタンクと見分けがつかない場合もあることには注意が必要です。
パワーステアリング警告灯が光る原因
パワーステアリング警告灯が光るのは、パワーステアリングシステムに異常が検知されたときです(パワーステアリング警告灯が備わっているかどうかは車種によって異なります)。パワーステアリング警告灯が光ったときは、ハンドルの操作に違和感が出ることもあれば、いつもと変わらない場合もあります。
パワーステアリングシステムに異常が検知されたとき、その原因はパワーステアリングの部品だけとは限りません。たとえば、バッテリーが弱っていると、パワーステアリングのアシストが弱まることもあります。
パワーステアリング警告灯が光った原因の特定には、車のコンピュータに残った記録を読み出す診断機が必要です。整備工場などで診断を受ければ、部品の故障なのか、配線や電源の問題なのかを切り分けられます。
パワーステアリング警告灯が光ったときの対処方法
パワーステアリング警告灯が光ったら、走り続けずに、速度を落として、路肩や駐車場など安全な場所に車を止めてください。そのうえで、整備工場などに連絡するまでが、パワーステアリング警告灯が光ったときの基本的な対処方法になります。
走り続けないほうがよいのは、走行中にパワーステアリングのアシストが失われる可能性があるからです。パワーステアリングのアシストがなくなるとハンドルは極端に重くなり、普段どおりのハンドル操作ができなくなります。普段どおりのハンドル操作ができないと、カーブを曲がりきれない、障害物を避けきれない事態につながりかねません。
また、車を止めるまでのあいだにパワーステアリング警告灯が消えることもあります。
パワーステアリング警告灯が消えたあとに点検を受けるかどうかについて、メーカーの案内は一致していません。エンジンをかけ直してパワーステアリング警告灯が消えたのなら問題ないとするメーカーがある一方で、光った時点で点検を受けるよう求めるメーカーもあります。
注意したいのは、パワーステアリング警告灯がいったん消えたあとにまた光る場合です。
この場合、パワーステアリング警告灯が消えているあいだも、部品の不具合は直っていません。パワーステアリングシステムの異常を検知した記録は車のコンピュータに残るので、一度でも光ったのなら、次の点検で整備工場に見てもらいましょう。
なお、ハンドルが重くて自走が難しいときや、止めた場所から車を動かせないときは、加入している保険のロードサービスやJAFを使いましょう。
パワーステアリングの不具合で現れる症状
パワーステアリングに不具合が起こった場合に現れやすい症状を説明します。
なお、くるまのハヤシ(車検の速太郎)では、車検でご来店いただいた際には受付で、車の調子や気になる症状を伺っています。ここで挙げるようなパワーステアリングの不具合で現れる症状に心当たりがあれば、車検の受付でお伝えください。
ハンドルが重くなる
ハンドルが極端に重くなるのは、パワーステアリングのアシストが失われたときです。
ハンドルの重さの変化に気づきやすいのは、停車したままハンドルを回す場面です。タイヤが路面に押し付けられたまま向きを変えることになるので、パワーステアリングのアシストが弱まっていると、いつものハンドルの重さとの差がはっきり出ます。
異音がする
ハンドルを回したときに、うなるような音が発生することがあります。
油圧式パワーステアリングと電動油圧式パワーステアリングで音が鳴るとき、原因として疑われるのは、ポンプの劣化や故障と、パワーステアリングフルードの量の不足や通り道への空気の混入です。ポンプをベルトで回している車では、ベルトの緩みや損傷が音の原因になることもあります。
電動パワーステアリングでも、モーターやギヤの異常で音が発生することがあります。音の種類だけで音の原因は決められないので、いつ、どんな操作をしたときに鳴るのかを整備士に伝えてください。
ハンドルにガタつきが出る
ハンドルに遊びやガタつきを感じたとき、パワーステアリングの不具合を疑うのは自然です。パワーステアリングはハンドルとタイヤのあいだで働く装備なので、その部品に緩みや摩耗があれば、ハンドルの動きに出るからです。
ただし、ガタつきの原因がパワーステアリングそのものではないこともあります。ハンドルの動きをタイヤへ伝えている部分のうち、パワーステアリング以外の部品の摩耗や緩みが、ガタつきとして出ているケースもあるためです。
オイルが漏れる
パワーステアリングのオイル漏れは、以下のような形で見つかることが多いです。
- 駐車した場所にオイルの染みができる
- タンクの液面が下がる
- 点検でにじみを指摘される
パワーステアリングのオイル漏れが発生するのは、パワーステアリングフルードを使う油圧式パワーステアリングと電動油圧式パワーステアリングに限られます。パワーステアリングフルードが漏れやすいのは、ポンプやギヤ・ボックス、ホースやパイプ、部品どうしのつなぎ目です。
パワーステアリングのオイル漏れは、はじめはにじみとして現れ、進むと滴るようになることが多いです。そのうえ、ホースはエンジンルームの奥や下側を通っていることもあり、ボンネットを開けて上から見ただけではオイル漏れを見つけにくくなります。ただし、点検で車を上げてもらえば、オイル漏れをにじみの段階で見つけやすくなります。
パワーステアリングのオイル漏れを放っておくと、パワーステアリングフルードの量が規定を下回って通り道に空気が入るので、パワーステアリングのアシストは十分に効きません。ポンプにも負担がかかるため、オイル漏れは部品を傷める原因にもなります。
また、パワーステアリングのオイル漏れは車検にも関わる問題です。オイルが滴るような漏れがある車は、原則として車検に通りません。にじみの段階では車検の合否の判断が分かれることがありますが、にじみが進む可能性がある以上、車検の前に修理を依頼するのがよいでしょう。
くるまのハヤシ(車検の速太郎)なら車の状態や車種をもとに、無料で修理費用の見積もりを実施できます。
パワーステアリングフルード(パワステオイル)の交換
パワステオイルとも呼ばれるパワーステアリングフルードは、エンジンオイルとは役割の違うオイルです。ポンプが生み出した圧力を伝えてハンドルを回す力に変えるほか、ギヤや軸受けなどが擦れて傷むのを防ぐ働きも持っています。何を入れるかは車種ごとに指定があり、どの車にも同じものが使えるわけではありません。ここでは、自分の車で交換が要るのか、要るならいつ換えればよいのかを順に見ていきます。
交換が必要な方式と不要な方式
パワーステアリングフルードの交換が要るのは、油圧式パワーステアリングと電動油圧式パワーステアリングに限られます。
この2つの方式では、パワーステアリングフルードの量の確認も、オイル漏れの点検も欠かせません。一方、電動パワーステアリングはパワーステアリングフルードを使わないため、交換もオイル漏れの点検も要りません。
交換時期の目安
パワーステアリングフルードの交換時期は、車種ごとの指定に従うのが基本です。
パワーステアリングフルードについては、走行距離や年数を交換時期の目安とする考え方もありますが、すべての車に一律の交換時期が定められているわけではありません。また、規定の量が入っていれば作動に支障はないという見方もあれば、劣化したパワーステアリングフルードは部品を傷めるので、早めに換えたほうがよいという見方もあります。
そのため、車種ごとの交換時期が指定されていない場合は、走行距離だけで交換時期を機械的に決めるより、点検時にパワーステアリングフルードの状態や車の使用状況を踏まえて判断するのが現実的です。停車したままハンドルを回す機会が多い使い方などでは、走行距離が少なくても、パワーステアリングフルードにかかる負担が大きくなるためです。
交換したほうがよいサイン
パワーステアリングフルードを交換したほうがよい主なサインには、次のようなものがあります。
- 色が濁って黒ずんでいる
- 焦げたような臭いがする
- タンクの液面が下がっている
液面の低下は漏れや消費のサインです。色と臭いは、劣化の進み具合を判断する手がかりになります。
ただし、新品のパワーステアリングフルードの色は製品によって違うので、比べる相手を知らないまま、色だけで劣化を判断するのは難しくなります。
なお、パワーステアリングフルードの液面を見るときは、エンジンが冷えている状態で確認しましょう。
パワーステアリングフルードの交換そのものは、整備工場などに任せてください。指定と違うパワーステアリングフルードを入れると不具合につながることがありますし、作業の途中で通り道に空気が入ると、パワーステアリングのアシストが正しく作動しなくなることがあります。
くるまのハヤシ(車検の速太郎)は車検だけでなく、パワーステアリングの点検のみでも承っております。
